イタリア20州の食卓を巡る旅|第1回 ピエモンテ州:王家の洗練と白トリュフの香りに包まれて

アルプスの麓、秋になると深い霧に包まれる幻想的な丘陵地帯。そこには、世界中の美食家が一生に一度は訪れたいと願う、至高の食文化が息づいています。

連載第1回は、イタリア北西部に位置するピエモンテ州。白トリュフの官能的な香り、重厚な赤ワインの深み、そしてかつての王家が愛した洗練された一皿一皿——。まるでグラスの底に歴史が透けて見えるような、格調高い旅の始まりです。

この記事では、ピエモンテの郷土料理とワインの物語から、東京で本場の味に出会えるレストラン、そして自宅をリストランテに変えるお取り寄せ情報まで、五感で旅するようにご紹介します。

管理栄養士マイラー
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イタリアは以前世界一周旅行で訪れましたが、体調不良であまりお料理を堪能できなかったのが心残りということもあり、食を通して旅行気分を楽しみます。

順次レストランや食材のレビューも掲載予定です。ぜひお付き合いください。

ピエモンテ州とは?「山の麓」に宿る気品

ピエモンテとは、イタリア語で「山の麓(Piedi=足、Monte=山)」を意味します。その名の通り、北と西をアルプス山脈に抱かれたこの地は、厳しい寒さを凌ぐための力強い食文化を育んできました。

  • 州都:トリノ(かつてのイタリア王国の首都)
  • 位置:イタリア北西部(フランス・スイスと国境を接する)
  • キーワード白トリュフ・ヘーゼルナッツ・バローロ・サヴォイア王家

かつてイタリアを統一したサヴォイア王家の中心地として栄えた歴史から、農民の素朴な知恵と宮廷文化の優雅さが溶け合った、イタリアでも唯一無二の気品ある食の世界が広がっています。

州都トリノ——王家の記憶が息づく美食の都

ピエモンテを語るとき、州都トリノの存在を抜きにすることはできません。1800年代には統一イタリアの最初の首都として栄えたこの街は、サヴォイア家が遺したバロック様式の宮殿や美しい広場が今もそのまま残り、歩くだけで歴史の厚みをじわりと感じさせてくれる街並みです。

カステッロ広場に面するトリノ王宮とマダマ宮殿は、世界遺産「サヴォイア家の王宮群」の一部。壮麗なバロック建築の中に足を踏み入れると、かつてここで国家の命運が語られ、宮廷の晩餐が開かれていた情景が自然と浮かんでくるようです。

街のシンボルとも言えるのが、高さ約167.5メートルのモーレ・アントネリアーナ。もともと礼拝堂として建設されたこの塔は、現在は国立映画博物館として生まれ変わり、ガラス張りのエレベーターで登った展望台からは、碁盤目状のトリノ市街と遠く連なるアルプスの峰々が一望できます。晴れた冬の日には、モンブランの白い頂まで見渡せることも。

そしてトリノはなんといっても「チョコレートの街」。フランス文化の影響を色濃く受けたサヴォイア家の宮廷が甘いものを愛したことが、この街のお菓子文化の礎となりました。街のあちこちに歴史的なカフェが点在し、19世紀にタイムスリップしたかのような空間で一杯のコーヒーやチョコレートドリンクをいただく——それもトリノならではの贅沢な時間の過ごし方です。

世界遺産が認めた「ワインの聖地」

ピエモンテには、ワイン造りの文化そのものが世界に認められた場所があります。

● 世界遺産「ピエモンテのブドウ畑の景観:ランゲ・ロエロ・モンフェッラート」

何世紀にもわたり、人々が急斜面にブドウを植え、ワインと共に生きてきた証。黄金色に輝く秋のブドウ畑は、ため息が出るほどの美しさです。

どこまでも続く丘の連なり、霧の中に浮かび上がる古城。グラスの中の一杯には、この厳しい自然と向き合ってきた人々の情熱が凝縮されています。

ピエモンテの誇る「物語のある郷土料理」

ピエモンテ料理は、バターや肉、チーズをふんだんに使った、北イタリアらしいコク深くエレガントな味わいが特徴です。

バーニャ・カウダ

アンチョビとニンニク、オリーブオイルを煮詰めた温かいソース。冬、暖炉を囲んで野菜を浸しながら食べる、この州の団らんの象徴です。「バーニャ・カウダ」とはピエモンテ語で「熱いソース」という意味。実は日本でもすっかりおなじみのメニューですが、本場では旬の根菜や生野菜を豪快に並べ、鍋ごとテーブルに運ぶのがスタイル。温かいソースをたっぷり絡めながら食べる、あの賑やかな食卓のにぎわいがピエモンテの冬の定番の光景だそう!素敵ですね。

タヤリン(Tajarin)

ピエモンテ独自の極細手打ちパスタ。卵黄をたっぷり使って練り上げた生地は、黄金色に輝き、香りとコクが段違い。ランゲ地方を発祥とし、15世紀ごろから祭日のごちそうとして愛されてきた伝統の一品です。秋には白トリュフを贅沢に削りかけ、バターシンプルに和えるのが王道スタイル。

アニョロッティ・デル・プリン

小指の先ほどの小さなラビオリで、中に肉の詰め物が入っています。「プリン」はピエモンテ語で「つまむ」という意味で、生地の端をつまんで成形することからこの名がつきました。バローロで煮込んだ牛肉を詰めて、その煮汁をそのままソースにするのが伝統的なスタイル。食材を無駄にしない昔ながらの知恵が生きています。

ヴィテッロ・トンナート

低温でしっとり仕上げた仔牛肉に、ツナとアンチョビのクリーミーなソースをかけた冷製前菜です。お肉に魚介ソース?と最初は戸惑いますが、食べてみると不思議とまとまりがある。ピエモンテの家庭料理の定番で、夏の食卓によく登場するそうですよ。

パンナコッタ

実はこれ、日本人にとって最も身近なピエモンテ発祥スイーツかもしれません。「パンナ=生クリーム、コッタ=加熱した」という名の通り、生クリームを煮て冷やし固めたシンプルな冷製デザート。酪農が盛んなピエモンテの豊かな乳製品文化が生んだ一品で、日本では1990年代にティラミスに続く大ブームとなり、ファミレスやカフェの定番スイーツとして根付きました。実は本場ピエモンテのパンナコッタは、ゼラチンを使わず生クリームだけを煮詰めて固める方法が伝統的で、日本のものとは別物の濃厚さだとか。旅するチャンスがあれば、ぜひ本場の味を確かめたいものです。

モンブラン

日本の洋菓子店でも人気のモンブランも、実はピエモンテ生まれ。ヘーゼルナッツやマロンが豊富なこの地では、栗の産地として有名なランゲ地方のクリームを使ったドルチェが古くから愛されてきました。名前はもちろん、アルプス最高峰モン・ブランから。ヨーロッパではマロン(栗)クリームを絞り出した素朴なスタイルが定番で、日本のふわっとした生クリームとは異なるずっしりとした味わいです。

「ワインの王様」を輩出する最高峰の産地

ピエモンテは、イタリアワインの最高格付け「DOCG」の数が全州最多の19を誇る、まさにワイン王国の頂点です。

🍷 バローロ(Barolo DOCG)

「王のワインであり、ワインの王である」と称される赤。ネッビオーロ種から生まれる強固なタンニンと、熟成による複雑な香りは圧巻です。開けたての若いうちはやや硬さを感じますが、数年〜十数年寝かせると、タールやバラ、ドライフルーツのような豊かな香りが花開きます。特別な日の一本に、ぜひ。

🍷 バルバレスコ(Barbaresco DOCG)

「ワインの女王」。バローロと同じネッビオーロ種から作られますが、よりしなやかで優美、女性的な華やかさが魅力です。バローロほど年月をかけなくても楽しめるため、ピエモンテワイン入門にもおすすめ。

🍷 バルベーラ(Barbera d’Asti DOCG / Barbera d’Alba DOC)

ピエモンテで最も多く飲まれている日常のワイン。バローロほど重くなく、チェリーやプラムのフレッシュな果実味と適度な酸味が心地よい赤ワインです。バーニャ・カウダやパスタと合わせると抜群の相性。「まずピエモンテワインを試してみたい」という方にぴったりです。

🥂 モスカート・ダスティ(Moscato d’Asti DOCG)

マスカットの香りが弾ける微発泡の甘口。お酒が苦手な方でも楽しめる、幸せな香りのデザートワインです。パンナコッタやモンブランと合わせると、至福のマリアージュが生まれます。アルコール度数も低めなので、ワイン初心者の方にも気軽に試してほしい一本。

カフェ・アル・ビチェリンとトリノのカフェ文化

トリノの街を歩いていると、クラシカルな内装の老舗カフェがあちこちに顔を出します。フランス文化の影響を受けたサヴォイア家のお膝元だったこの街では、カフェは単なる喫茶の場ではなく、貴族や文人が集い、思想を交わし、歴史を動かした知的サロンでもありました。

そんなトリノのカフェ文化の中でも、特に世界中から訪れる人が絶えないのが、コンソラータ広場に面したカフェ・アル・ビチェリン(Caffè al Bicerin)。創業は1763年——日本でいえば江戸時代の中頃にあたります。

このカフェが生み出した看板ドリンク、「ビチェリン(Bicerin)」は、ホットチョコレート・エスプレッソ・生クリームを重ねた三層仕立ての飲み物です。「ビチェリン」とはピエモンテ語で「小さなグラス」という意味。脚付きの小さなグラスにそっと注がれた三層を、混ぜずにそのまま口に運ぶと——ビターなエスプレッソ、濃厚なチョコレート、なめらかなクリームが口の中でゆっくりと溶け合います。

このカフェには、歴史上の著名人が数多く通いつめたそう。イタリア統一の英雄であり初代首相のカミッロ・カヴールは常連客として知られ、入口近くの大理石のテーブルがいつも彼の定席だったといいます。哲学者フリードリヒ・ニーチェはトリノに滞在中にここを愛し、「アンチキリスト」などの著作をしたためた時期にも足繁く通ったとされています。また「三銃士」「モンテクリスト伯」で知られる小説家アレクサンドル・デュマは友人への手紙に「トリノを去りがたい理由の一つ」としてビチェリンの名を記したといいます。さらに作曲家プッチーニは、オペラ「ラ・ボエーム」の作中にこのカフェをモデルとした場面を登場させたとも伝わっています。

創業当時、カフェは男性の社交場が一般的でしたが、このカフェは女性の店主たちが代々守り続け、マダムたちが集う優雅な場所として知られてきた歴史もあります。小さな店内には20名ほどしか座れず、行列ができることも珍しくありませんが、その待ち時間さえも旅の記憶になりそうです。

管理栄養士マイラー
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なんと、このカフェは現在日本にも出店しています。2018年に海外初進出として東京(新宿高島屋など)に開店し、今では東京・名古屋・大阪・福岡など各地で本場のビチェリンを味わうことができます。260年以上守り続けてきた門外不出のレシピで作られたビチェリンが、日本でも手軽に体験できるのはうれしいですね。

 Bicerin(ビチェリン)新宿髙島屋店

1763年創業。トリノ最古のカフェが守り続ける伝統の味。

トリノの「変わらぬ伝統」を味わえる場所。新宿の喧騒を忘れさせてくれる、クラシックで重厚な空間が広がっています。ビチェリンは甘さ控えめで、カカオのビターさとコーヒーのコクが絶妙でスイーツが苦手な方でも意外と飲みやすいそう。

一休.comで「Bicerin SHINJUKU TAKASHIMAYA」のコースを確認する

ビチェリンのバーチ・ディ・ダーマ

ビチェリンの「バーチ・ディ・ダーマ」は、1763年創業のイタリア老舗カフェが手掛ける、アーモンド生地でチョコを挟んだ「貴婦人のキス」という意味の伝統焼き菓子です。

サクッとした食感と上品な甘さが特徴で、G20やG7サミットで提供された実績を持つ、手土産として非常に人気が高い至極の逸品です。

【ホワイトデーギフト】 ビチェリン バーチ・ディ・ダーマ 15個入り【G20サミット提供 高級 スイーツ バーチディダーマ】菓子折り手土産に人気の高級お菓子 新宿高島屋店でも取扱い 秘書の手土産特選殿堂入り

管理栄養士の視点|「質」を愉しむスローフードの教え

美食の街として知られるピエモンテは、実は「スローフード運動」発祥の地でもあります。管理栄養士の目で見ると、その食文化には理にかなったポイントがたくさんあります。

良質な脂質の選択

特産の「ヘーゼルナッツ」には、悪玉コレステロールを抑制するオレイン酸やビタミンEが豊富。

スローフードの精神(ゆっくり味わう): 濃厚で香り高い料理を五感でゆっくり楽しむことで、少量でも脳の満腹中枢が刺激され、心身ともに高い満足感を得られます。

ポリフェノールの恩恵

長期熟成の赤ワインに含まれる豊富なポリフェノール。食事と共にゆっくり楽しむことで、リラックス効果と抗酸化作用が期待できます。

発酵食品の知恵

長期熟成チーズや、旨味たっぷりのアンチョビなど、保存と発酵の知恵が随所に生きています。腸内環境を整える効果も期待できる食材たちです。

「たくさん食べる」のではなく「本物を少しずつ、大切にいただく」。そんな豊かな食のあり方を、ピエモンテの食卓は教えてくれます。

8. 東京で出会う、ピエモンテの熱気

飛行機に乗らなくても、東京にはシェフが人生をかけてピエモンテの味を守っている名店があります。

管理栄養士マイラー
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一休レストランなどの予約サイトを活用すると、特別な日のディナーもスムーズ。こだわりのレストランが多く、その日に一番美味しい食材を使ってシェフが腕をふるう、お任せコースを提供しているお店が多いです。

リストランテ ラ・チャウ(田町)

ピエモンテの星付きの味を継承する、至高の手打ちパスタ

店名の「ラ・チャウ」は、馬渡シェフが4年半修行したピエモンテの1つ星レストランから受け継いだもの。シェフのルーツである現地の伝統を、東京の地で大切に表現されています。

ここに注目: シェフのスペシャリテとして名高いのが、卵黄を贅沢に使った黄金色の細打ちパスタ**「タヤリン」**。コースの構成や季節によりますが、ピエモンテ料理の真髄を感じさせる一皿として、多くのファンを魅了し続けています。

旅のヒント: 運が良ければ、指先でつまんだような愛らしい形のパスタ**「アニョロッティ・デル・プリン」**に出会えることも。バローロを中心とした圧巻のワインリストと共に、大人の美食時間を楽しめます。

一休.comで「リストランテ ラ・チャウ」のコースを確認する

nerisa(神楽坂)

スローフードの聖地で磨かれた、現代的で力強い郷土の息吹

ピエモンテの2つ星名店で修行した田中シェフが、日本の豊かな四季をピエモンテの技法で描き出すレストランです。おまかせコース一本に絞っているからこそ、その時一番輝いている食材を堪能できます。

一休.comで「nerisa」のコースを確認する

 自宅でピエモンテ気分!旅するお取り寄せ

おうちでの週末を、ちょっと贅沢な「ピエモンテ記念日」に。全国どこからでも手に入る、私のおすすめリストです。

アルバ産白トリュフ塩

トリュフ塩をかけただけで、いつものお料理がレストランのお味に♪

トリュフ塩は卵料理や、サラダ、温野菜等、いろいろなお料理に大活躍していますが、アルバ産のものは別格だそう。次はこちらを試したいと思います。

 

イタリアのアルバ(Alba)は、北西部ピエモンテ州に位置する、世界最高峰の白トリュフの名産地です。秋(10月〜11月)には「アルバ白トリュフ祭り」が開催され、世界中から美食家が集まります!いつか行ってみたいものです。

バローロ&バルバレスコ

ピエモンテの有名高級ワイン、ワインの王「バローロ」とワインの女王「バルバレスコ」の飲み比べセット。

作り手によっての個性を楽しめる5本セット。通常バローロは1本最低5000円〜8000円、バルバレスコは3000円〜5000円以上ほどすることを思うとかなりお得です。ギフトにもおすすめ!

 

バルベーラ・ダスティ

毎日飲みたいカジュアルなピエモンテ赤ワイン。バーニャ・カウダや肉料理と抜群の相性です。

バローロやバルバレスコ、キャンティとセットになったセットもおすすめ!

 

ジャンドゥーヤ(チョコ)

ピエモンテ発祥のナッツチョコ。煎したヘーゼルナッツやアーモンドのペーストと、チョコレートを混ぜ合わせたイタリア・トリノ発祥のチョコレート菓子です。香ばしいナッツの濃厚な風味となめらかな口どけが特徴で、三角柱(船を逆さまにした形)の「ジャンドゥイオット」が代表的です。コーヒーとの相性は最高です!

管理栄養士マイラー
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19世紀のイタリアで、高級なカカオを節約するためにナッツを混ぜたことが始まりとされています。

 

まとめ|霧の向こうに広がる、美食の頂点へ

ピエモンテ州、いかがでしたか?

霧深い丘の上で生まれたワイン、王家の食卓に並んだパスタ、そして260年以上愛され続けるビチェリンの一杯——。「食べること」がこんなにも豊かな物語を持っているのだと、改めて気づかされる場所です。

遠いイタリアの話のようで、実はパンナコッタもモンブランも、バーニャ・カウダも、もうすでに私たちの日常の中にあるんですよね。そう思うと、ピエモンテって意外と身近にあると感じることができます。

次回は、モンブランの麓に広がる小さな州、ヴァッレ・ダオスタへ。標高の高い山の村で愛される、とろけるチーズ料理が待っています。お楽しみに!

▶ 次の記事:【第2回】ヴァッレ・ダオスタ編はこちら(近日公開)

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元減量中・管理栄養士マイラーと社畜サポーターがマイルや海外発券など使ってコスパ良く旅行を楽しむ方法をご紹介しています。2019年より当ブログを運営しています。マイルを貯めてファーストクラスに搭乗してからファーストクラスの虜に。マイルやポイントの活用術や趣味のワインについてご紹介します。